沖タイ記者のひとことが、まともな会見をつくった
テレビを観ていても良く聴こえた。
『総理、これが記者会見と言えますか!』。14日午後6時からの総理記者会見。これまで通りシナリオ通りの質疑が終わったため、官邸広報が会見終了を告げた時、怒声に近い声で叫んだ記者がいた。
沖縄タイムスの阿部岳記者だという。
さらに遮る広報に若干、表情が固まっていた安倍首相本人が『まあ、いいじゃないですか』と。地方紙記者のひとことで、やっとやらせではない記者会見が再開した。

沖縄タイムスの阿部岳記者
これまでは質疑シナリオ通りの安倍総理会見
前回は、質問のある多数の記者が挙手したが、質問を僅か5問、それも全てシナリオ通りと見られる質疑で、批判が相次いだ。
中でもジャーナリストの江川紹子さんが何度も挙手をしたが、会見を終了。安倍首相もこれを無視して私邸に帰ってしまった。
そして江川さんのTwitterでの問題提起で世論や心ある記者らが動き、やっとほんの僅かだが、最後だけは会見と呼べるものにはなったような気がする。
もちろん今回もシナリオが終了したら、官邸広報は質疑を打ち切ろうとした。
会見の中身の希薄さはともかく、これだけは前進したことを喜ぶべきなのだろうか。しかし事態を進展させたのは、大新聞や通信社記者じゃなく、こんな会見場に入ったこともない地方記者だったのは皮肉だ。
安倍首相、プロンプターを読むだけでは国民の心に響かない

会見は相変わらず事前通告による質問の答弁を、いかにも官僚が書いたと分かる、具体性に乏しいものだった。
これを左右に設置したプロンプター を使用して、いかにも国民に語りかける雰囲気を出したいのだが、やはり棒読み感は否めなかった。
沖縄タイムス記者の痛烈なひとことのあとは追加で4問の質問に次々に挙手が。フリーランスの女性記者、ネットメディアの記者らが質問、安倍首相自らが記者を指すのは初めての光景ではあった。
そして後でわかったことだが、朝日新聞は官邸広報からの質問内容の事前調査に、返答を拒否していたという。当たり前のことだが、これも一歩前進だ。

記者会見は記者が政治家を、政治家が記者を鍛える場だと考える。緊張感のある記者会見は国民のためになるのはもちろん、国益にも繋がる。
もりもと なおき