注文していた『続・全共闘白書』(情況出版)がきた。前シリーズから25年ぶり。70才、古希を過ぎた全共闘活動家たちの、人生最終章の報告だ。
団塊世代の中でもひときわ輝いた存在が全共闘とグループサウンズだったと思う。彼らの現状、考え方の変遷、ずっと変わらないもの…
25年前の前作のデータとの比較もあり、実に興味深い現代史の証言でもある。

学生運動への関わり、思い、その後の人生について
前作では526人がアンケートに答えた。今回も企画した編集実行委員会がその人たちにアンケートを送付したが、半数以上が戻ってきたという。
そして返信も本人死亡や闘病中と、家人からの連絡が少なからずあり、四半世紀の時間の重さを感じた。
結局、かつての同志で広げてもらい、450余人から回答が寄せられたようだ。大学は96校、高校などは22校に及んだ。
質問は学生運動への思い、人生は変わったか、革命を信じたか、どんな仕事をしたか、家族は、今の年収は、年金は、嫌いな国、嫌いな政治家、支持政党、好きな国、天皇制について、何才まで生きたいか…など多岐に渡り、全部で71項目にも及んだ。
たまに年収が突出した医学部卒のドクターもいたが、気になったのはやはり大学中退が多く、非正規雇用の時間が長かったのかもしれない。
70才を超えているにもかかわらず、年金額の少なさが目についた。


エリート人生を歩んだ人の回答がほとんど無いのは残念だ
答えている元全共闘の人生は様々だが無事、大学を卒業し、エリートコースに乗った人も少なからずいるはずだが、ほとんど回答者には入っていないようだった。
東大全共闘には旧大蔵省から自民党代議士になり、後に自死した人もいた。同じく官僚になった人も相当な数いるが、アンケートにはもちろん登場していない。
同じく活動歴を隠して大企業へ潜り込み、出世した人もかなりいるはずだが、白書にはほとんど登場はしていないのが、少し残念ではあった。こうしたエリート人生を歩いた人たちの学生運動と人生、仕事との関わりも聞いてみたいと思ったからだ。
しかし今も当時を語ることができるのは、学生運動で大きな傷を負いながら、それでも価値観を変えずに不器用な生き方をしてきた人が多いのではないだろうか。
『反米愛国』の思い変わらず、安保は大半が破棄すべき
個々の質問への回答はこの世代、さらに活動家特有の極端な答えが出たが、好きな国は日本、嫌いな国はアメリカは、昔と同じだった。
学生運動、政治活動のバックボーンは『反米愛国』だったのだ。だから日米安保については今だ大半が否定的で『廃棄すべき』だった。
25年前の白書は東大全共闘議長の山本義隆氏、日大全共闘議長の秋田明大氏という学生運動のスターが回答を寄せたが、今回は無かった。
しかし驚いたのは日本赤軍の女王といわれた重信房子氏(懲役20年で服役中、明治大学)が、獄中からアンケートに答えていた。
『学生運動のおかげで世界中の人々と出会い、充実した人生を送っている』など、まだまだ喪失していない熱い思いを伝えていた。

今も『誇りに思っている』青春時代の闘いの日々
ざっと見る限り、アンケートに回答した人たちは、学生運動に関わったがために、不遇な人生を余儀なくされた人もたくさんいるのが分かった。

しかしそれでもほぼ全員がかつて運動に参加したことを『今も誇りに思っている』と答えたことは、なぜかホッとした。
そのひとことでその後、価値のある人生を送ってきたことが分かる。
そして『今の政治や社会が間違った方向へいく時、それらを正す国民の声を今も下支えしているのは、私たち元全共闘だ!』と。
もりもとなおき