『就職が決まり髪を切ったことを彼女に言い訳しなきゃならない時代は、ホントにあった』
就職が決まって/髪を切ってきた時/もう若くないさと/君に言い訳したね♫
この歌詞の意味は最近の女子では絶対、理解不能だ。だって若い連中はツーブロックが多い。普通の男子にロン毛はまずいないから。
そして散髪してきただけで何故、彼女に言い訳しなきゃならないのか…
実は荒井由実時代のユーミンが、過ぎし学生時代を思い出させてくれるこの詩を書いた頃は、男子大学生の意識高い系はみんな髪を伸ばしていた時代だった。
そしてこの歌『いちご白書をもう一度』は、アメリカコロンビア大学の学園紛争を描いた映画がテーマ。
長い髪は反体制運動の活動家たちの、ひとつの象徴だった時代があったのだ。

歌の主人公は、恐らく彼女とデモに行ったり、大学のバリケードの中で生活したこともあったのかもしれない。
その彼が普通に就活して大企業に入るのは、仲間への裏切りでもある。
だから彼女には照れ隠しで『もう若くないさ』と、言い訳したのだ。
心情は分かる!
でも結局、『情けないヤツ』と、彼女にフラれたのか否かまでは、ユーミンは教えてはくれなかった。
ちなみに私は彼女に言い訳する必要は全くなかった。

徳島新聞社の面接の時は長い髪だった。おまけに全員がスーツにネクタイ姿の中、私はハイネックのセーターに茶色のコーデュロイのジャケット。下は綿パンでスニーカーだった。
自分でも違和感を感じたから、未だに記憶は鮮明だ。
逆に活動家っぽいところが当時の森田茂社長に気に入られたのかもしれない。
一方、吉田拓郎はこの2〜3年前、
僕の髪が肩まで伸びて/君と同じになったなら/約束通り街の教会で/結婚しようよ♫
と歌ったから、長い髪とベルボトムのジーンズは、反体制派だけじゃなく、男子のファッションでもあった。
(学生時代はロン毛だった)
もりもとなおき