他人の物を盗むのは犯罪だ。警察に逮捕されたり新聞に名前が載るのも仕方ないのかもしれない。しかしこんな微罪で…と、逆に気の毒なケースはある。ごく最近、地元紙電子版に載った2つの窃盗事件。記事もこんな簡単に済ませて良かったのか。
こんな微罪で逮捕され、世間に晒されるということ
いずれも今月の出来事だ。
まず3日、自称アルバイト店員の男(47)が鳴門市内のスーパーでおにぎり4個(計492円相当)を盗み店員に見つかり、鳴門署に窃盗の現行犯で逮捕された。
カゴを持たずにビニール袋に入れたというから、万引だろう。

そしてもう一件。
住所不定、無職の男(73)が徳島市内のスーパーマーケットでキャットフード1個(価格107円)を盗んだとして名西署に窃盗容疑で逮捕された。
おにぎり4個、片やキャットフードひとつの犯行だった。

老人はなぜたった100円のネコのエサを盗んだのか
おにぎりの人は相当、お腹が減っていたのだろう。腹が満足していたらおにぎりなど盗むわけがないからだ。
なぜおにぎりを買うお金が無かったのか。
ひょっとしたらコロナ不況で非正規雇用の勤め先も解雇され、にっちもさっちもならなくなっていたのかもしれない。
そしてキャットフード。どういう理由があったのだろう。飼っているネコの餌代も無かったのかもしれない。あるいはネコ好きで、懐いてやって来るノラネコにエサをやりたくてもお金がなかったのかもしれない。
いずれにしてもこの"犯人"は優しいお年寄りの可能性は高い。

社会面を作る記者はもっと社会の陰の部分に目を
景気の良い時代ならこうした記事に私も気にはならなかった。
しかし失業者の数以上にこのコロナ不況、生活が追い込まれている人たちは多い。
逮捕した警察はともかく社会面を作る記者たちは、もっともっと弱者に目を向けるべきじゃないのか。もっと背景を取材すべきじゃなかったのか。場合によっては社会面トップを張れる記事になったかもしれない。
私は元事件記者だがこの2つの小さな記事が、ずっと胸の奥につかえている。
もりもとなおき