露と落ち /露と消えにし我が身かな/浪速のことは /夢のまた夢
有名な豊臣秀吉の辞世の句だ。
どんな意味か推測すれば…恐らく自分の人生なんて一粒の露みたいなものだ。ポツンと落ちれば消えてしまう。
浪速で天下を納めたことも、考えてみれば夢の中で夢を見ていたようなものだった…と。
秀吉のような天下人でさえ、死を前にして人生の儚さを実感したのだろう。

今は亡き森田童子の私の好きな歌に『みんな夢でありました』がある。
ちょうど'70安保闘争の頃の学生活動家たちの心情を歌ったものだ。
あの時代は何だったのですか/あのときめきは何だったのですか…
と闘った日々を振り返るが、結局は
"みんな夢でありました"と。
でも、"ただひたむきな僕たちが立っていた"と、森田童子は歌った。

結局、懸命に闘ったけどそれは夢を見ていたのと同じで、社会は何も変わらなかった。
でも僕たちの闘いはひたむきで真剣だったんだーということだろう。
癌宣告を受けた時、私にはもうあまり時間が残されていないことをドクターから告げられた。
当然、その夜はいろんなことを考えたりそれまでの人生を振り返ったりした。
不思議なものでやはり楽しかったこと、充実していたことほど『人生は夢のまた夢』のごとくだった。
自分は恐らく普通の人の人生以上に楽しい夢はたくさんみたんだとの、思いもあった。
そして人生をもう一度やり直せたらどんな生き方があるんだろうかとも。

当初、思われたより私の人生の残り時間はもう少しあるかもしれない。これもドクターや家族、皆んなの応援のおかげだ。
もう少しの間、いい夢を見ることができたらいいな、と思う。
もりもとなおき