『ポカリが生まれた年、東京でもエアコンがいらないほど、列島は冷夏だった』
私が支局に出た年だからこの夏のことは鮮明に覚えている。とにかくあまりエアコンはいらなかった。そして新聞記事は農家の嘆きの声や、高騰した野菜や果物に手が出ない消費者の悲痛な声で溢れた。
1980年夏。日本列島は極端な冷夏だった。8月の平均気温だけでも全国で4度も低かったというから、相当、涼しかったはずだ(体感はもっと涼しかった)
「ちなみにこの年8月の東京の気温を見てみると、30度を超えたのはわずかに5日間だけ。最高気温も32.2度という信じられない低さだった。
中でも8月3日は雨だったが最高気温21度、最低気温18.6度。8月全てを見ても25度以下は何と10日間も!全てが記録的な寒い夏だったようだ。
もちろん、東京だけじゃなく全国、同じ傾向だった。雨が多く極端な日照不足。涼しいと喜んでばかりはいられず、農作物の収穫には多大な影響がでた。
エアコンなど全く売れなかったのは言うまでもない。
当時の気象概況をみると、"7月以降、オホーツク海高気圧が強まり、太平洋高気圧が南の海上に後退した。低気圧や前線が日本列島付近に停滞する状態が続いたため、南西諸島を除き冷夏になった"ーとある。
35°を超えるのがごく普通の昨今。こんな冷夏じゃなくとも、せめて2〜3度低くならないものか。

ちなみに大塚製薬のポカリスエットはこの年に発売開始した。極端な"冷夏"ということを考えれば、恵まれたスタートではなかったかもしれない。
しかし今や、ポカリ無しの日本の夏は考えられない。
もりもとなおき