羨ましいくらい才のある人はいる
何かしら羨ましいくらい才のある人はいるものだ。まだタウン誌の黎明期だった頃。徳島のタウン誌『あわわ』の名前を全国に轟かせたのが社長兼編集長の住友達也さんだった。
そして何年後かタウン誌はパッとやめたと思ったら、今度は高齢者ら『買い物難民のために』と、自ら移動スーパー『とくし丸』を発案、経営に乗り出した。
タウン誌から移動スーパーへ転身
いろいろ模索してるなと思っていたら、何と何といつのまにかたったの7年で全国に400台が走っているというから驚いた。
2012年、スタートさせた徳島が28台ということは、380台弱が他の都道府県に走っているということだ。完全に全国制覇したのだろう。
実際、とくし丸が走っていないのは、沖縄など3県のみ。ここも年内には制覇する予定だ。もちろん他の都道府県を走っても全て『とくし丸』。
とくし丸は軽四トラックを改造し、冷凍・冷蔵庫も備える。ドライバーがそれぞれ自分のとくし丸のオーナー。
都道府県毎に提携しているスーパーに毎朝出向き、商品を積み込み、お得意さんのいる集落を回る。
この提携スーパーも111店に及んでいる。
住友さんは都道府県のスーパーと提携を結ぶために奔走するほか、オーナーを発掘してきた。
スタートの徳島では中山間地域をコツコツと歩き、顧客を開拓するなど、当初は大変な努力だったと思う。
とくし丸は買い物難民の救世主だ
とくし丸の顧客は全国の中山間地域を中心に、高齢化した過疎の町や村が多い。近くにスーパーがないから、とくし丸の来訪が頼りだ。
独り暮らしのお年寄りが多く、買い物に行きたくとも足となる車がない。そんなお年寄りにとってとくし丸は本当に助かっている。
自分の自宅の近所で買い物ができる喜びも、お年寄りらを虜にしている。
農林水産省の調査では、全国の買い物難民は800数十万人おり、右肩上がりで増えている。さらに高齢者ドライバーが社会問題となっており、ますます需要は高まりそうだ。
住友さんはさらに全国に1000台を目指すという。
社会運動も商売もさらっと成功させるしなやかさ
住友さんといえば吉野川可動堰化計画に反対をした住民運動のリーダーのひとりとして、計画を白紙に追い込んだのも有名だ。
あのあまりに有名な『投票に行こう!』の発案者の1人だった。私は当時、彼らとは反対の立場にあったが、正直叶わないと感じた。
シンクタンクにいた私の友人が全国のタウン誌を調査、研究している頃、『あわわ』を数冊、送ったことがある。
直ぐに返ってきた返事が『このタウン誌は凄いわ!相当、売れてないか?』と。人口80万人(当時)の徳島県で4万部(当時)と言ったら、『やっぱりな!思った通りだ!』との話しだった。
商売しても社会運動をしても、やはり才のある人はいる。そういう意味でわたしは住友達也氏を、これからも刮目していきたい。
もりもと なおき