大統領が棺担ぎ、旅客機の尾翼にまで肖像画を
遠い外国でこれだけ人々の尊敬を集めた日本人はいただろうか。
アフガニスタンで長年に渡り人道支援に取り組み、何者かのグループに襲われ射殺されたNGO『ペシャワール会』代表の医師中村哲さんの死を、国をあげて多くのアフガンの人々が悼んでいる。

日本へ運ぶ遺体の入る棺が空港を厳かに運ばれたが、その先頭でアフガニスタンの大統領自らが担いだのには、心から胸が熱くなった。
またアフガニスタンで国内線や国際線を手がけるカーム航空は、中村さんへの追悼を示すために、同社の航空機の尾翼になんと中村さんの肖像画を描いた。
そしてその絵の写真はFacebookに投稿されたが、全世界で大きな反響を呼んでいる。


中村さんが日本人であることを心底、誇りに思う
地球人であった中村さんに、私たちが日本人云々とこだわるのは気が引けるし、ズレているかもしれない。
しかし本当に中村さんの存在は誇らしい思いだ。
過去も今も経済至上主義で、とかく小さな途上国とのお付き合いは政府からの経済援助だった。
例えばODAで多額のカネを出し、道路やダム、水路の工事を日本のスーパーゼネコンが請け負う。
素晴らしい技術力で立派な工事を進めてきたかもしれない。
ところが中村さんは医師として現地の人々の生命を救い、多くの人々を指導し、自ら聴診器をスコップに持ち替えた。そして土砂を運び灌漑用の水路建設を黙々人力でやってきた。
どちらが人々の心を揺さぶるかということだと思う。
『憲法9条があったから何度も命が救われた』と
中村さんは日本のメディアに『医師は仮の姿。飢えや渇きは薬では治せない』といつも語った。
水があれば病気が治せると、井戸を掘ったし、砂漠を豊かな農地に変えるため灌漑用水を切り開いた。
食べるものがあれば街に出て、戦いに参加する必要がないからだ。
そんな意味でも何万人の人々の命を救ったか分からない。
『アフガニスタンの人々は日本が一度も戦争をせずに復興を果たしたことを知っている。広島と長崎で何が起きたかも知っている。憲法9条があったから、日本人だから命が救われたという経験を何度もした』と。
心に残った。
ザンビアで医療活動続ける徳島の吉田さんもいる
実は私たちの地元徳島にももう30年に渡りアフリカザンビアで医療活動を続ける医師がいる。
私の友人の徳島県議会議員、吉田ますこさんの夫の吉田修さん。

吉野川市山川町で診療所を経営する傍らザンビアでの医療活動も続けている。
今、ザンビアにいるようだが、悲報に大変な衝撃を受けていると思う。
医師にもいろんな人がいるが、中村さんや吉田さんに共通するのは何だろうと考える。はっきりと言えるのは途上国で頑張っている自分…みたいなヒロイズムは、彼らにはかけらも、微塵もないということ。
恐らく一人でも多くの人の命を救いたいという医師として、人間としての熱い思いだろう。
もりもと なおき