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候補者として何度も味わった投開票日のドキドキ感

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『候補者の投票日当日の苦しさは、あまり味わいたくない体験だ』

選挙投票日、候補者は何をして、何を考えているのか。
私は8回、投票日の朝を迎えた。選挙は弱かったから、自信を持って朝を迎えたのはたったの1回しかなかった。
前夜はとにかく疲労困憊でぐっすり眠る。朝は目が覚めるなり、突然、ドキドキ感に襲われる。
お昼前くらいからは電話が頻繁に。全て『家族で投票に行ってきたよ』という嬉しい知らせばかりだ。

お昼を食べてからは選挙事務所を覗くが、5〜6人のメンバーが片付けをしたり夜の準備をしてくれている。
事務所にパイプ椅子を並べてくれるのは分かるが、奥には表に張り出す墨汁で書かれた『当選御礼』の大きな張り紙やクス玉まで。

私が行くと慌てて隠すが、それは私が準備万端で落選した苦い経験があるからだ。
以来、"嬉しい準備"は私に内緒で。スタッフにしたら準備しないわけにはいかない。

夕方には自宅に戻るが、なんか胸が苦しい。そんなわけだから晩飯は全く進まない。腹の調子が悪くなることはよくあった。

8時を過ぎれば地元ケーブルテレビの開票速報を見るが、なかなか進まない。会場の全景が映る時、候補者のカゴの投票用紙の束も。一瞬、自分のカゴの束が少ないとまた腹が痛くなる。

だいたい上位は選管第2回発表で当確だ。私などは常に中位〜下位グループだから当確がつかず苦しい時間だけが過ぎていく。
その辺りで私の携帯が鳴る。事務所の仲間から。弾んだ声で『おめでとうございます!○○君がお迎えに行ってますから直ぐに事務所へ来てください』

こんな幸せと嬉しいことはない。迎えに来ている若い仲間は2カ月ほどずっと一緒にいてくれたメンバーだ。
玄関で顔を見るなり抱き合って2人で泣くのが当選6回の毎回のお約束だった。

もちろん、私は苦杯も舐めた。その時の辛さ、悲しみ、申し訳なさは例えようがない。人生の試練と言えば美しいが、一瞬にして全てを失う絶望感があった。
(癌告知は似た感覚だった)

あと、新聞記者を辞めて県議会議員補欠選挙(徳島選挙区)に出た初の選挙。補欠だからたった1人を選ぶ選挙だ。何もない私が大組織をバックの候補者と闘ったのは暴挙だったかもしれない。

しかし"元記者の正義漢"が受け善戦した。驚いたのは何と徳島市が開票率100%で対立候補と同数!何万票の世界だからあり得ない事態だった。
間もなく選挙区だった残す佐那河内村が開票率100%に。ここは負けたと思ったがなんと234票差で私が勝ったのだ。


すでに深夜零時になっていたにも関わらず事務所には500人もの人が集まり、歓喜の初当選だった。
苦しさは一瞬にして吹き飛んだ。

もりもとなおき

  • この記事を書いた人

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森本 尚樹 早稲田大学卒。元新聞記者。約20年間、県議会議員を務めました。現在は福祉関連の会社の参与と在京シンクタンクの研究顧問

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