今、読まれている22年も前の五木寛之さんのエッセイ
22年も前に出版された五木寛之の『大河の一滴』が最近、よく売れているという。確かに本屋に行くと平積みされている。
実は20年余前、五木さんの講演を聞き、その日にこの本を買った。
五木寛之のエッセイは若い頃読んだ『ゴキブリのうた』や『風に吹かれて』は、まるで青春小説を読んでいるようだった。
しかしこの『大河の一滴』は重く、これまでの生き方を省みただけでなく、これからの生き方の道標になったような気がする。
そして20年も経ってから人々がこの本を求めるのは、もちろん、新型コロナウイルスという見えない敵を前にし、多くの人たちが、なすすべもないからだど感じる。
そしてわれわれは大河と比べたらたったの一滴の存在なんだと。
人生は苦しみと絶望の連続なのだと五木さん
昨夜5月9日、五木寛之さんがくりぃむしちゅーの「世界一受けたい授業」に緊急出演したのには驚いた。
すでに87才というご高齢。新型コロナウイルスの感染拡大の中、不安はあったようだが、大河の一滴に込めた思いを語りたかったようだ。
大河の一滴は五木さんが中2の時と小説を書き始めたころ、真剣に自殺を考えたことを告白する。
そして頑張ることに疲れてしまった人々に向けてこう語る。
『いまこそ、人生は苦しみと絶望の連続だと、あきらめることからはじめよう』。
そして『傷みや苦痛を敵視して闘うのはよそう。ブッダも親鸞も、究極のマイナス思考から出発したのだ』と。
即ち今の苦しみに悩まず、闘わず受け入れよう。歴史の中でとてつもない神のような存在の巨人らだって、最初は普通のわれわれと同じだったんだと、解く。
われわれは所詮、大河の一滴の存在でしかない
人の病についても癌とウイルス、そして抗体にまで触れている。予言であるまい。まさかウイルスが出てきたことにも驚いた。
今だからこそわれわれは所詮、大河の一滴でしかないちっぽけな存在であることを、自覚することから、先の生き方が見えてくるのかもしれない。
多くの人に今、読んでもらいたいと心から思う。
もりもとなおき