虐待事案、児相の仕事のひとつという現実
児童相談所は本当に人が足らず、虐待し殺されてしまう子どもに対応できないくらい忙しいのか?
今回、助けることができた子どもを助けることができなかった千葉県柏児童相談所の場合、1人の児童福祉司あたり50〜60件の事案を同時並行で扱っているという。
もちろん、これは全て虐待事案じゃない。
児相は、都道府県や政令市などが設けているが、虐待だけでなく▽子どもの発育に関する相談▽障害、非行、不登校などの相談・支援にも対応している。
虐待事案への対応は、仕事の中のひとつといえる。
で、ひとり50〜60件の仕事が過多か否か?少なくとも言えることは、今回、栗原心愛さんが父親の勇一郎に虐殺された事件は、児相の対応力の無さが重なったのは間違いない。
こうした児相の内部の問題抜きに、人員増だけこだわっても、何の解決にもならないだろう。
難しいモンスター親との対峙
虐待のケースは子どもや家族に直接、対応するのは"児童福祉司"という職種だ。虐待の場合は、外部からの通報などで疑いが発覚すると、面接・家庭訪問・一時保護・その後のフォローまで児童福祉司が担当することになる。
そして緊急の案件か否か、虐待の有無、子どもを一時保護するかどうかの判断、家庭に踏み込んで親と直接、厳しい話しをしなければならない。
中には栗原が野田市教委を脅したように、一筋縄でいかない親はたくさんいる。剣幕に負けてしまい、腰を引いてしまう担当も決して少なくはないだろう。
家庭を訪問する児相の訓練。警察官や警察OBが同行すれば、対応力は増す
最近は児童福祉司に若い女性が急増しており、モンスター親との対峙はひじょうに難しい。
児相内に虐待専属チームの設置を
児童相談所の改革もいわれているが、私は児相の中で虐待事案だけ扱うグループを設置すべきだと思う。
モンスターと対峙できる職員、例えば警察OBなどを採用、家庭訪問には必ず児童福祉司とともに行動する。
親の罵声などに負け、引き返さないことが一番、大切だ。
あと、国の指導の下、児相と警察が全ての情報を共有すべき。
暴行、傷害、暴力行為は強い姿勢で臨むべきだろう。
少し古いが厚生労働省によると、心中以外の虐待死は、2015年度は48例52人。そのうち児相が関与していたのは16例(33.3%)だった。
つまり、3人に1人の子どもは、何らかの形で児相につながっていたにも関わらず、命を助けることができなかったということだ。
児相の現況を責めるだけでは解決しない。改革するしかないだろう。
もりもと なおき