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南米で取材中、事故で早逝したT君は風俗の女性を女神にたとえた

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徳島のソープでの女性が初体験だった大手メディア支局の新人記者T君(東大卒)は、初めてのソープから戻って来るなり私に、
『人をこんなに幸せにしてくれる女性は、僕は女神様だと思います』
と、興奮気味に話してくれたのが忘れられない。優しい女性だったのだろう。

その後、T君は本社に栄転し南米での取材中、30才そこそこで事故死した。
こんな純粋なヤツだったから、生きていたらきっといい記者になっただろうな。
今でもあの時の幸せそうな彼の笑顔を思い出すことがある。

今は知らないが、昔、40年ほど前は県警は売春防止月間には特定のソープランド店に目をつけ、売春防止法違反(管理売春)容疑で摘発するのが恒例だった。

それが警察の仕事とはいえ、お世話になった?若い記者たちはとても心が痛んだものだ。でもほとんど記事にもしないのに、ワイワイいいながら取材に駆けつけた。

もちろんボロ儲けしている経営者には何の同情もない。同情したのは突然、接客中に警察に踏み込まれ、署に連れて行かれて調書をとられる女の子たちに対してだった。

こうした場合、女性は売春の事実が分かっても逮捕されたり送検されることはまず無い。客も同じく。
何故なら接客女性は経営者らに売春する場所を提供され、結果、"搾取されるかわいそうな存在・被害者"との位置付けだったのだ。

調書を取られたら婦人相談所(当時)に保護され、形だけの更正教育を受け、身元引き受け人の下、解放されるーのが手順だった。

世の中には風俗産業で働く女性を軽蔑したりする人は一定数いるが、僕ら若い記者たちはそんな差別意識は微塵もなかった。
彼女たち風俗で働く女性は大半が僕らと同世代だった。

当時の社会背景を考えれば、彼女たちには恐らく人には言えない背負うものがあったのだろうと思う。

一流大学を出たボンボン育ち揃いの記者たちは、彼女たちと育った境遇は真逆だ。

でも彼女たちが自分のカラダを張って生きていることに気合いと潔さを感じたし、ある意味、T君みたいに彼女たちを天使みたいに思っている純情なヤツもいた。

もりもとなおき

  • この記事を書いた人

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森本 尚樹 早稲田大学卒。元新聞記者。約20年間、県議会議員を務めました。現在は福祉関連の会社の参与と在京シンクタンクの研究顧問

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