第一志望の大学に合格したら皆んなに報告したいものだが、全国の地元新聞に勝手に合格大学と出身校、氏名を出された時代があった。本人の意思確認も無しだから、いやはや凄まじい時代だったのだ。

ウソのような本当のお話です
かなり以前に廃止されているが、われら世代は実は大学に合格すると【大学名・高校名・氏名】がなんと新聞に掲載されたのだ。少しあとの世代までこの悪しき慣習は続いていたと思う。
ごく一部の私立大学を除き、国公立大学の全て、私立大学も大半がメディア向けにも公開し、共同通信の配信を受けた新聞が地元関係分を掲載していたのだ。
にわかに信じられないのは本人の了解などなかったから無茶な話しだ。今考えると人権もプライバシーも無かった。
新聞社は読者サービスと思い込んでいたようだ
逆に新聞社は読者サービスと思い込んでいた節ががあった。でないとあんな面倒臭い作業はしなかったはずだ。
さすがに人口の多い東京はなかったと思うが、私が高校時代を過ごした名古屋は中日新聞市民版などに、徳島はもちろん徳島新聞に掲載された。
例えば名古屋大学【○○高校】白石麻衣、森本尚樹、佐々木希、水野文也…みたいな感じだった。
だから誰がどこの大学に合格したのか高校の友人らはもちろん、近所のおばさんにまで分かってしまうから、母親とかも焦っていた。
友だちの名前を発見し、焦る自分がいた
実際、友だちの名前が合格した大学とともに新聞紙上に出始めると、まだどこも合格していない者はかなり焦った。何回も出るヤツもおり、『あいつすげ〜な』と。
逆に不本意なところしか合格しなかった場合には、頼むから掲載はやめてくれ!との心境だったかもしれない。
実際、徳島新聞に苦情の電話がいつも入った。ある女子高生は泣きながら『私はこんな大学行きませんからね。第一志望は別なんです。だから勝手に掲載するのやめてください!』と。この女の子の気持ちは痛いほどよく分かった。
私はついに一度も名前が掲載されなかった
幸いというか不幸にも私は一度も新聞の合格者欄に名前が出なかった。国立大学は落ちたし、唯一合格の早稲田は慶応とともにマスコミに合格名簿の提供をしていなかったからだ。
だからクラスメートらは『あいつ全落ちか⁈』と心配していたらしい。近所のおばさんたちもうちのおふくろの顔を見て気の毒そうにしていたようだ。

さて私立大学も大半がほぼ日程を終え、合格発表が続いている。私大では最も遅いグループの早稲田大学も、22日で13学部全ての入試を終えた。25、26日は国公立大学の二次試験だが、体調万全での健闘を祈りたい。
もりもとなおき