僕らの高校時代は女子は短大に進学するケースが多かった。かなり勉強ができてもわざわざ短大を選択する女友だちも多かったのだ。
もちろん、名古屋でも旭ヶ丘や明和、瑞陵高校など名門校は女子も東大や名古屋大学、国立医学部に進学していた。
短大が多かったのはこれらに続く高校の女子たちだった。
なぜ女子は短大なのか?
半世紀も前、普通の家庭では女の子が進学する場合は『4年制は必要ない。短大が花嫁道具になる』みたいな風潮があった。
なぜなら当時は一流企業でも、例え東大やお茶の水、早慶を卒業しても女子には総合職の門戸はまだ開かれていなかったのだ。
企業は短大を好んで採用し、結婚したら即、寿退社を望むという、今では考えられないことが常識として罷り通っていたのだ。4年制大学卒の女子は就活でどれだけ苦戦したか。
だからクラスメイトの女子も教員や薬剤師になるという目的があった女子以外、普通に就職を望む子は、短大を選択した。
名古屋だと金城、淑徳、椙山という女子学園御三家が人気で、いずれも短大を併設していた。
うちの学校の女子は名古屋市立か愛知県立の短大か、この御三家の短大にほぼもれなく進学した。
東京だと青山学院の短大が"青短"と呼ばれ人気が高く、当時は偏差値的には短大の最高峰といわれた。
あとは共立、実践、フェリス、清泉各女子大学の短大が、企業からも僕らからも人気があった。
これら短大も21世紀になると次々と廃止され、名門青短もことし3月、その歴史に幕を閉じた。


しかし考えてみたら今も昔も、男も女も学力は同じ(むしろ女子の方が高い)。
その女子を差別し大企業は総合職として雇わず、さらに短大卒の優秀な女子でも結婚と同時に家庭に押し込んだんだから、もったいない話しだ。
ここ10年、日本の国力が急激に落ちてきたのは半世紀前のこうした愚かなツケはもちろん、基本的に未だに解消されない女性への差別もあるのは間違いないと思う。
もりもとなおき