運転中のクルマと電車内での化粧はいただけない
前のクルマが遅く左右に少し振るし、信号での再スタートが遅いのでどうしたものかと追い抜きざまにチラ見したら、何と40代、人妻風が運転しながら化粧直しをしていた。
前のミラーを下げ、覗きこみながら口紅を引いたりしていたから、危なくて仕方ない。
しかし真昼間になぜ?
私の勘だが不倫からの帰途だったんじゃないだろうか。恐らく。
クルマで化粧と言えば通常、朝が多い。寝坊したOLが信号待ちの度に顔を描いているのは良く見かけるが、これもスマホ運転並みに危険だ。
あと都会だと夕刻が多い。お店に出勤途中だろうが、なぜ家でしてこないんだろ?とよく思ったものだ。こちらはなかなか見学する方は楽しかった。
窓の外は雨だった『雨の物語』の思い出
女の子の化粧をする姿は嫌いではない。
40年以上前に流行った好きな歌にイルカが歌う名曲『雨の物語』(伊勢正三作詞作曲)という歌がある。その歌詞で、
化粧する君の〜背中がと〜ても〜
小さく見えて〜仕方ないから〜
僕はまだ君を〜愛しているんだろ〜
そんなことふと〜思いながら〜

恐らく最後の夜を過ごした翌朝、彼女が帰り支度をしている。
それを背中越しに眺め彼の方は切なくなったんだと思う。
別れることになったが、本当は俺はまだ好きなんだと… そして、
窓の外は雨〜あの日と同じ〜
これも『22才の別れ』『なごり雪』を書いた伊勢正三の詞だ。こんな繊細な詞は正やんしか書けない。

この歌を聴く度にいくつになっても胸キュンで思い出す、学生時代のある朝の情景…
僕の調布のアパート。コタツの上に置いた小さな鏡に向かって黙って化粧をする姿をじっと後ろから眺めた。
女の子の肩幅って本当に細いんだなぁと、なぜか思ったのを覚えている。そしてナチュラルメイクでも赤いルージュを引いたら女の子はこんなに綺麗になってしまうんだなって。
『授業サボれよ!』と僕。
『ピアノだからダメ!』と彼女。
窓の外は雨。あの日と同じ。もう40年余。嫌になるくらい時間の経つのは早い。
もりもと なおき