『寂聴さん、安らかに』
生まれて初めて高級料亭に行ったのは25才の時。その『しまだ』に招待してくれたのは瀬戸内寂聴さんだった。


寂聴さんは当時、日本初の死後再審請求となった徳島ラジオ商事件の支援を勢力的に続けており、取材に当たっていた私たちを労ってくれたのだ。
まだその頃は50代半ば。お色気のある話しも含め、楽しい話しをたくさんしてくれた。

寂聴さんのお話では15年前の文化勲章祝賀会の時の挨拶が忘れられない。『歳をとっても、もう70とかもう80だから…といって何もしないのは皆さん、やめましょう』と。
例えば75才の人が90才まで生きたら、15年間、何もしないのはあまりにもったいない。人生最後まで目標を持とうという意味だった。
自身も『80才から書いた源氏物語のおかげでこんな賞をいただけた』と。
あと徳島で開催された国民文化祭の時、突然、空いていた私の横の座席に。
私が『寂聴さん、早く一番前に行かなきゃ』と促すと『えっ⁈ここあかんの?』と言われこちらが驚いたことがあった。
徳島新聞で連載していた秘書妹尾まなほさんのほのぼのとした連載を楽しみにしていたが、もう終わるのかな…
とにかく徳島が生んだ偉大な文学者であり傑物だった。
心からご冥福をお祈りします。
もりもとなおき