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斜陽、新聞産業。地方紙は今後、生き残ることができるのか?

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週刊ダイヤモンドの地銀・地方紙・百貨店『地方エリートの没落』との特集が話題を呼んでいる。この三職種がエリートかどうかは別にして、バブル景気を挟み少なくとも地方都市で栄華を極めたのは事実だろう。しかしながら今はそれぞれの凋落は酷く、生き残りをかけた闘いに直面している。

全国、地方紙とも減少続く新聞の発行部数

私自身、未だに新聞人としての自負がある。銀行、百貨店はこの雑誌を読んでいただくとして、新聞の現状について触れてみたい。

新聞産業を支える二本柱は購読料、そして広告収入だ。事業収入などはこの二つに比べて極めて低い。ところが地方都市の人口減少、急激な高齢化、若者を中心とした活字離れで、発行部数はどこも減少を続けている。

昔は"高齢者は新聞が好き"と相場が決まっていたが、やはり年金生活者にとって月数千円の購読料は生活を圧迫する。
そして若い世代はハナから新聞を読まないから取らないのは当然だろう。

栄華極めた新聞産業の中の地方紙の存在感

私は徳島県の地元紙徳島新聞に16年間、勤めた。良い時代だったのだろう。入社以降、待遇面で急激な右肩上がりが続いた。給料もボーナスも面白いように上がり続けたのだ。

地方紙ながら夏と冬のボーナスは一時朝日新聞よりも高額で新聞業界のほぼトップの時代も続いた。3月には利益還元ということで期末賞与まであった。

確かボーナスは年間プラスの一律金も含めたら、軽く10カ月分を超えていたから、待遇面では地方紙の雄と呼ばれることもあった。
やはり社がこれだけの給与や賞与を支払えたのは、一時、80%後半にもなった全国一の県内世帯普及率のおかげだ。

何せ10軒のうち9軒もが徳島新聞をとってくれるのだから広告効果は抜群だ。だから他の地方紙より広告単科が高かったのが大きかった。

掲載を断るくらい広告があふれた時代もあった

徳島新聞は最終面を他社のようなラジオテレビの番組欄ではなく基本、当時から全面広告ページだ。
このページに広告掲載を希望する県内企業は多く、バブル期はもったいないことに掲載をお断りをするくらいだと、広告担当によく聞かされた。

今はこのページに広告を出せる県内企業は少なく、広告全体が落ち込みバブル期とは比べるべくもない。もちろん一気に下がるのではなく、広告面でもじわじわと新聞産業そのものが退潮してきた。

もともと新聞産業などは極めて生産性が低い。20年以上も続いたわが国のゼロ成長、マイナス成長の中、新聞産業も厳しい経営を余儀なくされるのは、必然だっただろう。

学歴格差が一切ないのが新聞業界の誇りだったが…

こうした中、どこともやっているのは経営の合理化だ。
実は新聞産業の誇りは学歴不問、待遇面で学歴格差など全くないところだった。
私が入社した頃は中学を出て活字工や印刷工として働いていた年配の先輩もたくさんいた。給与体系は中学卒でも一流大学を出た記者でも給与体系は全く同じだったのだ。

これは全国紙も地方紙も同様。だから深夜から未明にかけて働く印刷職場の社員などは、会社で一番の高給取りだった。

しかし近年はどこも印刷などは別会社として切り離してきた。
現業部門を全くの別法人とすることで人件費を抑制しているのだ。
言い換えればいわゆるブルーカラーを切り捨て、記者や営業のホワイトカラーの待遇面を守ったにすぎないとの声も聞こえる。

もはや部数減は全国、地方紙とも食い止めることは不可能だ

ダイヤモンドによると新聞の命である発行部数は例外なく右肩下がりとなってきた。私の古巣とて例外ではなく、部数減少のワースト10に入っていたのは衝撃だ。5年前に比べ15.3%の減、19万8000部とついに20万部を割り込んだ。

徳島県人口の予想を超える減少、全国有数の高齢化…部数減は販売担当がいかなる努力をしても食い止めるのはもはや不可能だろう。

徳島新聞の広告は昔は住宅・自動車・ブライダルの3本柱が屋台骨を支えてきたが、いずれもネット広告にとって変わっている。

ネット媒体への地方紙参入は無理がある

全国紙も地方紙も紙媒体を維持しながらネット媒体に活路を見いだそうとしているが、なかなか難しい。
例えばアメリカの高級紙ニューヨークタイムズやワシントンポストは世界にネット読者を広げ、莫大な利益を上げている。しかし残念ながら日本には世界に読者を拡大できる新聞はない。特に地方紙のネット戦略は今後も成長の可能性は無いだろう。

これだけ部数減、広告減となってもまだまだ凄いなと思ったのは、ダイヤモンドによれば古巣のことしの夏のボーナスが平均で89万円も出ていたことだ。

新聞の命運は記事のクオリティが握るのは間違い無い

営業や販売はこれまで通り努力を続けるのはもちろんだが、やはり新聞の命は編集、記事のクオリティに尽きる。人口減による部数の自然減はどうしようもないが、記事がダメなら当然、部数減に拍車をかける。

今、全ての新聞が部数減を続ける中、一紙だけ気を吐いているのは東京新聞だと言われる。
これはやはり市民の目線や感覚で社会や政治を観察して、喜びや怒りを読者と共有すること。そして少しでも社会や暮らしを良くしようとの意識が東京新聞の記者たちに働いているからだと思う。

良い記事は広告収入のアップに繋がるのか。東京新聞の夏のボーナスは35才平均で104万円、業界トップだった。

地方紙が生き残る、少しでも寿命を伸ばすためには、記者たちが東京新聞のようにジャーナリズムの原点に帰るしかないだろう。

かつての地方紙の雄、徳島新聞が生き残るためには…

私の後輩にも正義感、知性、筆力にあふれた素晴らしい記者はいる。しかしながら外から拝見すると、彼らの能力や個性が生かされていないなというのが、実感だ。

地方紙は全国紙とは全くスタンスは異なる。地方政治や行政を厳しく監視する目は大切だ。
そして徳島県が発展するためや皆んなが幸せになる記事も不可欠なのだ。

しかしながら今は全ての面で記者たちの正義の目が、温かい目が広く県内に届いていない。

私は新聞が好きだ。いろいろ(かなりの)問題点はあっても自分を育ててくれた徳島新聞を愛している。今一度、優秀な後輩たちの奮起を望まずにいられない。

もりもとなおき

  • この記事を書いた人

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森本 尚樹 早稲田大学卒。元新聞記者。約20年間、県議会議員を務めました。現在は福祉関連の会社の参与と在京シンクタンクの研究顧問

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