消費税率10%はやむなしか⁈今でも全体の税負担は消費税25%の国と変わらない
安倍首相が2度にわたり先延ばしにしていた消費税率を、来年10月から10%に引き上げることを閣議決定。安倍首相は今度こそ確実に履行することを改めて会見で強調した。
来年10月から消費税率10%とすることを決めた臨時閣議
わが国の財政状況を鑑みれば、消費税率10%はもはや待ったなし。誰も税金が上がるのは嬉しくないが、やむを得ない。景気が出来るだけ冷えこまないよう、国においては全力で対応すべきだ。
ひとつ知っておきたいことは日本の消費税は欧州諸国の半分もないと言われるが、とんでもない。生活必需品にも一律かかる為、全ての税負担は、消費税25%の国と、ほぼ変わらないという事実だ。
政権には鬼門の消費税。過去例外なく退陣
日本に初めて3%の消費税が導入されたのは1989年4月、平成元年だった。
それから遡ること10年前、大平政権も財政再建の為、一般消費税導入を閣議決定。しかし10月の総選挙の最中、世論を配慮し撤回したものの惨敗。さらに中曽根政権はその8年後、売上税法案を国会に提出したが、世論の猛烈な反対にあい廃案に追い込まれた。
そして元号が変わり竹下政権はついに消費税の導入を決定。以来、3%〜5%〜8%〜と上がってきた。
竹下さんはリクルート事件に関与し、消費税施行から2ヶ月後に退陣したが、消費税を導入した総理として世間の批判の矢面に立ったのも、大いに関係した。そして1988年、5%に上げた橋本政権も翌年の参院選で惨敗し退陣。
さらに民主党政権の菅直人首相は何故か突然、参院選直前に10%に上げることをうちだし惨敗。
さらに野田政権は2012年、"2014年に8% 、15年に10% "に引き上げる法案を提出、成立させていた。
法案を巡って内部が対立、崩壊に至ったのは記憶に新しい。
民主党は2009年9月の総選挙で、『向こう4年間は消費税を上げない』とのマニュフェストを掲げて政権奪取を果たしただけに、後の動きは国民の大きな不信感を買った。
『消費税の度に政権が失脚するのは、日本の政治に国民の信頼がないからだ』と、スウェーデン研究の第一人者だった私の恩師が言っていたことを思い出す。
消費税率10%と憲法改正とは
左様に消費税を触ることは時の内閣には大きなダメージを与えてきた。
安倍さんなどは2度にわたり延期してきたから、3度目の今回はもう絶対に引けない。何としても参院選までに憲法改正(改悪)発議をしたい安倍首相としたら、ギリギリのタイミングだったんだろう。
日本の消費税率は低くても国民の税負担はEUなどと変わらない
消費税は世界160か国で採用されている。EU諸国では20〜から27%までだが、25%前後が多い。日本のこれまでの3%〜8%は、世界の中では低い方だった。
しかしヨーロッパでは生活必需品には軽減税率を適用し、庶民の生活はしっかりと守っている。英国、カナダ、オーストラリアはゼロだ。
日本の消費税率は5%とか8%と低いため、食料品を含めすべての品目にこの税率が適用され、生活必需品などへの軽減税率はない。だから国税収入に占めるわが国の消費税収入の割合は約22%。消費税が低くても税負担は欧州各国とほぼ同水準になる。
やはり国民の税負担を国際比較するには、消費税率だけではなく、所得税や法人税などを含めた税体系全体や社会保障の水準などを見極める必要がある。
もりもと なおき