『美人活動家に誘われると簡単にセクトにオルグされた小池と佐々木の純情』
芥川賞を目指した"作家小池君"に関し、もう一つエピソードがある。あの時代は大学に入り最初の語学授業が始まると、必ず教室にセクトのオルグがやってきた。
当時の早稲田の自治会は嫌われていても革マル支配だったから、革マル派がきた。恐らく法政なら中核派、明治なら社青同解放派だったはずだ。
そして必ずこのオルグは女子学生であり、結構な美人と相場は決まっていた。
彼女はまずアンケート用紙を配る。安保のこととか大学の自治など、新入生に問う。そして後でこれをチェックした彼ら(革マル)は、"意識高い系"と判断した学生には必ずオルグに来たねーちゃんが個別攻撃を仕掛ける。
つまり電話をして『あなたとぜひ、2人っきりでお話しがしたいんだけど』と誘うのだ。
田舎から出て来たばかりのウブな連中は学生運動にも女にも全く免疫がない。鼻の下を伸ばしのこのこ喫茶店で革マルのねーちゃんと待ち合わせし、あっという間に陥落するというシナリオだ。
私など小慣れた都会の高校出身者はヤツらの手口は百も承知だから、その手には乗らない。アホのふりをして落書きをして出したからもちろん、電話はなかった。
わがクラスへ来た革マルはOさんという、22〜23才のかなりいい女だった。これは危ないなぁと周りを心配したが、やはり!だった。
半月後、キャンパスでの革マル派の集会に、クラスの小池と佐々木の両君が革マルのヘルメットを被り参加しているのを発見し、笑ってしまった。小池のヘルメットは『岐阜大』となっていた(笑)

しかしキャンパスは革マルと反革マルの血で血を洗う内ゲバが連日のように起こっていた最中だ。2人は直ぐに怖くなり、深入りする前に逃げたのだった。
聞けばやはりOさんの魅力に引き寄せられたようだった。
小池に聞いたら『Oさんに2人で会いたいとお茶を誘われたんで、嬉しくなり行ったがや』と。ひょっとしたらできるかもと、考えたらしい(超甘!)
佐々木は逃げたことで革マルに制裁を加えられるのではないかと勝手にビビってしまい、卒業までほとんどキャンパスに姿を見せなかった(笑)
私はOさんが革マル派じゃなく社青同解放派あたりなら間違いなく喫茶店に行っていただろう(笑)
あの時代、学生運動に入るきっかけは案外、こんな低次元のことが多かったのかもしれない。
もりもとなおき