河川が氾濫、クルマから脱出するも流された男性を助けた取材の思い出
河川の氾濫は本当に怖い。上流にダムがあり、貯水に耐えきれなくなり放流する時は、あっという間に下流域に氾濫する。

台風取材ではたくさんの思い出があるが、記者になって2年目の9月だった。
激しい風雨の中、同僚とともに徳島市の郊外で車を走らせていると大きな川の支流が氾濫していた。
近づかないように逃げようとしたが、クルマのライトに電柱にしがみついた人の姿が。
川が道路に氾濫し、恐らくその人は流されながら電柱にしがみついたようだった。
電柱の下は濁流だから、丸腰の僕らでは救出できない。真っ暗な中、クルマのライトを向け大きな声で『頑張れ!直ぐ助けを呼ぶから!』と何度も励ます。もう1人の先輩記者が公衆電話を探し消防と警察に通報した。
電柱に登りしがみついたものの、力尽きかかる男性
恐らく力付きかかっていたのかもしれない。電柱から少しずつ下がってくる。下は濁流、落ちれば濁流に飲み込まれてしまう。
そこへ消防が到着。濁流の中へロープでカラダを支えた署員らが入り、電柱からほとんどずり落ちてきた男性を救出した。
あと1分遅かったらダメだったかも。病院へ運ばれた男性の体温は34度台でほとんど意識無く、気力でしがみついていたようだ。
川の横の道路をクルマで走っていたら、川が氾濫しクルマから逃げたものの流され、近くの電柱にしがみついたらしい。
妻子のいる自宅の屋根が飛んでも樹木を続けた先輩の職業意識
翌日の朝刊を飾ったのはいうまでもないが、たまたま通りかかり、助けることができたのが嬉しかった。
この日、実は一緒に行動をしていた先輩の自宅の屋根が飛ばされた。
小さな子もいるから、私は直ぐに帰宅を促したが、『台風の中、お前ひとりで取材に行かせんやろ!』と、深夜まで取材活動を続けた。
彼の高い職業意識は未だに忘れられない。
もりもと なおき