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村上龍の愛と幻想のファシズムの読後のような虚脱感のある時代とは

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物凄く面白いのに、読後は何故か虚脱感倦怠感が襲った

この1〜2年、村上龍の『愛と幻想のファシズム』(1987年、講談社)という近未来、政治経済小説を読み終わった時のような感覚に、ずっと支配されている。

めちゃくちゃ面白い小説だった。読み終えるのがもったいないような気がしているのに、当時、明日の仕事を心配しながら、でも貴重な睡眠時間を削ってまで読んでしまった。上巻、下巻、確か1000ページはあったような。

それなのに全て読み終わった後の虚脱感というか倦怠感はなんだと思った。良い青春小説を読み終えたときに体感する高揚感とは、また逆の感情だった。

独裁者トウジが米ソ、世界企業グループから日本を救う

カナダでの狩猟生活から帰国した主人公トウジという男がいた。彼の精神を支配するのは、世の中は強い狩猟者と、強く美しい獣がいればいい。

その頃、世界はまさにザ・セブンとい7つの巨大企業群が支配を進め、日本も飲み込まれる寸前だった。
独裁者として頭角を現してきた主人公は、政治家として核もちらつかせ、二国で世界を支配しかかっていた米ソ(まだソ連の時代)さえも手玉にとった…
確かこんなあらすじだったような(間違えてたらゴメン)

私が当時、興味を抱いたのはザ・セブンの台頭だ。金融ビッグバンで日本の金融業界も再編が始まっていたし、企業の合併が始まったのもこの頃だ。
しかし世界が金融資本による7つの企業グループに支配されるとは、かなり荒唐無稽な話しだと思っていた。当時は。

ビッグバンの後、続く超巨大企業のM&Aを村上龍は予測?

以来、小説が世に出てからわずか30年。超大企業同士ののM&Aは普通の話しとなった。企業は世界規模で再編を繰り広げている。

当時は日産がフランス・ルノーと提携するなんてことはむろん、株の43%をルノーが所有するとは、想像さえしなかった。
きょうも武田薬品がアイルランドの薬品メーカーを買収するという、日本最大のM&Aが実現することがニュースになっていた。

30年以上前に書いた小説で、村上龍は見事にその後の世界経済の趨勢を言い当てていることにも、驚いた。

今や工業生産も国内で競い合っても意味はない。日本一は当然。世界の中で大きなシェアを占めなければ生き残っていけない。
携帯・スマホの製造から日本の家電メーカーが、軒並み撤退したのを見ればあまりに明白だ。
『1番じゃなきゃダメなんですか?』って、1番じゃなきゃダメなんだ、今は。

外に向くファシズムも危険だが、内弁慶のファシズムもいらない

『ファシズムは絶望から生まれる』と、日本を取り巻く絶望的な状況が、トウジをファシズムの道に走らせた。

そして
『ファシズムはそんなに悪いものじゃない。歴史が望むのなら、私は独裁者になろう』

こうして主人公は独裁者になった。なったから企業群から日本を守ることができたし、アメリカ、ソ連を手玉にとることができたのだ。

関税でトランプに脅され、プーチンには北方領土問題で完璧に翻弄されているのが今の日本の状況だ。北の刈り上げにまで舐めた発言をされている。

しかし国内にあってはメディアを締め付け、数に任せて恐ろしい法案をガンガンと強行採決してきた。

愛と幻想のファシズムを読んだあとに体感した同じような私の虚脱感、倦怠感は、恐らく外にはまるで意気地がないのに、".内弁慶なファシズム"の蔓延する日本の現状にだと、思う。

もりもと なおき

  • この記事を書いた人

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森本 尚樹 早稲田大学卒。元新聞記者。約20年間、県議会議員を務めました。現在は福祉関連の会社の参与と在京シンクタンクの研究顧問

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