その昔、学生運動華やかなりし頃の1969年5月。東京大学駒場キャンパス900番教室で行われた作家・三島由紀夫と東大全共闘との伝説の討論会が、何と50年ぶりに映画化された。タイトルは『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』。公開は3月20からだが、今から楽しみで仕方ない。

当時でもあり得なかった三島由紀夫対東大全共闘
当時、高校生だったから、リアルタイムでテレビのニュースで観たのをはっきりと覚えている。その後、この討論会をまとめた本も読んだ。
凄いなと思ったのは、たったひとりで1000人の東大全共闘を相手にした三島由紀夫さんが、一歩も引けをとらないどころか、圧倒しているイメージがあった。


頭の良い東大生とは普通は議論するだけで劣勢となるイメージがある。さらにガチガチに理論武装した東大全共闘が1000人だ。
普通の文学者ならひとりで乗り込むなんて考えも及ばない。しかし三島由紀夫は警視庁の止めるのを振り切って、乗り込んだ。
極左と極右はぐるり回って隣同士なんじゃないのか⁈
極左と極右は180度違うんじゃなく、ぐるりと回って隣同士なんじゃないかと、その後の人生で私に思わせるきっかけとなった出来事でもあった。
これまでもYouTubeでその時の模様を見ることはあったが、その日の討論は2時間半にも及んだ。
昨年、発見された貴重な記録映像をリストアし、当時の全共闘関係者、文学者やジャーナリストなどの識者の証言を織り交ぜながら、討論会の全貌を描き出した。おかしいのはナビゲーターとしています話題の東出昌大が出演している。

ことばに限りない力があった時代だった
三島由紀夫も学生らも灰皿もないところでたばこをスパスパやるのも今の時代からすると衝撃だ。三島さんが旨そうにたばこを吸う姿も印象的だった。
この映画がうたっているように、この討論会こそが"ことばとことばの殴り合い"そのくらい激しいものだった。
三島由紀夫は翌1970年11月25日、自身の『楯の会』のメンバーと陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で自衛隊の決起を呼びかけ、自決した。討論会からわずか1年半後。討論会に参加した学生たちは何を思っただろうか。
当時参加した元東大全共闘の劇作家芥正彦は『言葉が力があった時代の最後だとは思っている』と。そのとうりだと思う。
本当の保守とは右翼とは、左翼とは。現代の人に知ってもらうためにも若い人にも観てもらいたい。
もりもと なおき