巨悪は眠らせない〜特捜幻想産んだことば
われら世代の記者は相当な、特捜幻想がある。何故なら若き日に日本で最高の権力者である内閣総理大臣、その中でも歴史上、1番力があると思っていた現職の田中角栄さんを、東京地検特捜部がいとも簡単に収賄罪で逮捕してしまうのを、テレビを通じて目の当たりにしたからだ。
以来、自分が新聞記者になった後も特捜部は怖い、凄い…それが例え田舎の検察庁であっても、何となく腰を引いて取材する、情けない自分がいた。
そしてその後、裏切られても裏切られても、元検事総長伊藤栄樹が言った名言、"巨悪は眠らせない"を、多くの国民は純真にもずっと信じ、期待してきたものだ。
でも、残念ながら今度こそは特捜への幻想は完全に無くなってしまったし、もう期待することは二度とないような気がする。
文書改ざんも、内容はウソではない?政治家の関与は"ノーコメント"
昨日の森友問題にかかる告発案件について出した大阪地検特捜部の最終判断。国有地売却や決済文書改ざんに対する虚偽有印公文書作成など、全ての告発容疑について、関係38人、全員が不起訴となった(嫌疑不十分、嫌疑無し)
もちろん、証人喚問で『刑事訴追されているので…』と、ほとんど質問に答えることがなかった佐川宣寿前国税庁長官も。
上の命令で森友文書の改ざんをしたとして自殺した近畿財務局の職員の死は、なんだったんだろうと、改めて慚愧に耐えない。
この日の決定で大阪地検の山本真千子特捜部長は、300ヶ所もの改ざんについては「うその内容に変えたとまではいえない」と。さらに売却に関しては「国に財産上の損害を生じさせたとは認められない」と説明。政治家の関与については、“答えを差し控える”とだけ、コメントをした。
1年余り国全体を騒がせた案件は、だれもお咎めなしで、捜査上は呆気ない幕引きとなってしまった。
改ざんリークは、特捜の最後の良心?
今思うと朝日新聞のスクープとなり、検察のリークが噂された公文書改ざんの事実は、(圧力で?)"森友は事件に出来ない"と判断した大阪特捜の、最後の抵抗、良心だったのかもしれない。
あと、厚労省の村木厚子事件で冤罪事件になりかねない証拠ねつ造をした大阪地検特捜部は、今もこの一件が、トラウマになっているような気がしてならない。
いずれにせよ国民の国家行政に対する信頼を、根底から大きく突き崩した事件だったのに何故、こんな結末となったのか。
検察の上級官庁法務省が政権に忖度したとは思いたくないが、万が一そんな情けないことがあったとしても、検察は毅然と職務を全うして欲しかった。
もりもと なおき