歓楽街の近くに住むと、予想もつかないことが起こる。徳島新聞に入社して初めて住んだのは、徳島市内の歓楽街から徒歩5分くらいの古いハイツだった。

入居して半年経った頃だ。夜遅く、玄関を激しく叩くヤツがいた。しばらく放って置いたがあんまりしつこいので開けると、物凄い形相の、チンピラまがいの30才過ぎの男が飛び込んできた。
そして第一声が私に、
『おどれだれや!』『○子はどこにおるんや⁈ 』『隠すんやったらいてもうたるゾ』と、唖然とする私に一方的にまくし立てた。
かなりコーフンし、完全に殴りかかってきそうだったのでこちらも焦った。
『○子なんて知るかよ。ここは俺が半年前から借りとるんだ。部屋の中を見たら分かるやろ!』と言うと、男もやっと我に返ったのかキョトンと。

玄関開けたら丸見えの狭い部屋だから、とても女の住まいではないと理解したんだろう。
『えらい、すんまへん』と、大慌てで退散した。
恐らく付き合っていた女が以前、この部屋に住んでいて、行き先も告げられずに逃げられたんだろうなと思った。
また冬の寒い日の午前2時頃、トントンと。ドア越しに『どなた』と尋ねると『隣りの○○です』と、お隣のホステスさんだ。
聞けば中にカレシがいるはずだが、ドアを叩いても大声で呼んでも返事がない。自分は鍵を中に置いて出勤したから入れない。
だから私のベランダを乗り越えて、自室のベランダから部屋に入りたいと。

女性は酔ってるし転落でもしたら大変だ。私も躊躇したが、部屋にいるはずの男性が変死でもしていたらやっかいだ…
女性のカラダを私が落下しないよう捕まえ、何とか乗り越えた。
結局、ベランダの窓は鍵をかけておらず女性は部屋に入ったが、その後、カレシをなじる女性の大声が。
カレシは酔って爆睡していただけだった。
壁が薄い安普請のハイツだ。その後、ベッドの激しくきしむ音がしてきた…(汗)
(女性が乗り越えたのはこんな感じのベランダ。当時の私の部屋。近くの歓楽街)
もりもとなおき