いつまでも海とエレキが浮かぶ若大将だったが…
加山雄三と老人ホームはなかなか結びつかない。若大将のイメージが強烈過ぎるのだ。
若者はもちろん中年層まで、加山雄三のことを『頑張ってるおじいちゃん』みたいに思っている人は多い。
でもわれら世代は海とエレキが真っ先に思い浮かぶ永遠の若大将だ。
だから最近、奥さんの松本めぐみさんと夫婦で"自立型ケアハウス"に入居したニュースに、半世紀もの時の流れを実感した。もう若大将も83才なんだ。

高度経済成長の象徴だった若大将
若大将シリーズは日本の高度成長期を迎えた東京の坊ちゃん大学生の学生生活を描いたものだった。
その少しあとは団塊世代による学生運動が起こるのだけど、若大将シリーズは政治性はカケラもないのが逆に受けた。何も考えずに楽しめたからだ。
加山雄三も俳優としては遅咲きで、シリーズの全盛期はすでに20代の後半だった。
ただただ経済的に恵まれた環境の大学生が、恋に、スポーツに、エレキに遊び呆ける姿に、誰もが日本の豊かさを実感しつつある頃だったかもしれない。
大学のイメージとしては金持ちのボンボンが集う慶応とか成蹊、成城だった。

愛艇光進丸焼失が可哀想でならない
加山さんといえば船乗りになりたかったほど海と船が好きだが、一昨年4月、愛艇光進丸が焼失してしまったのは気の毒で可哀想だった。普段から家よりその船で寝泊りするくらい好きだったらしい。
半世紀近く住んだ成城の自宅をあとにしたのは今月だ。昨年、軽い脳梗塞を患ったというから、さすがの若大将も少し気弱になっていたのかもしれない。

恒例の誕生日コンサートはコロナの影響で中止になったが、次回は必ず復活して欲しい。
蒼い星くず、君といつまでも、お嫁においで、旅人よ、海その愛…若大将の歌は全て安心感がある。
もりもとなおき