菅首相誕生で一躍『苦労人』ということばが脚光を浴びている。首相が苦労人かどうかはさておき、日本人は苦労人とか叩き上げが大好きだ。

芸能界、スポーツ界、政界は苦労人が好きだ
苦労人…辞書には"世の中の事を良く知り、人情に厚い"とあるが、自身が苦労したから人の気持ちも分かるということだろう。
特にこのことばは芸能界やスポーツ界、もちろん政界には良く当てはまる。長いこと努力してやっと花開くことが多くあるからだ。
歌手であれば長いドサ回りで、地方のキャバレーなどを回っていた演歌歌手が、たまたま曲に恵まれブレイクした時、すでに40才なら完全な苦労人だ。
雌伏20年でNHKの紅白に出場を果たせば、間違いなく苦労人だろう。
だからカレッジフォークやニューミュージックには苦労人はひとりもいない。ユーミンや拓郎はどんなに苦労しても苦労人ではない。
相撲界は優勝したらみんな苦労人になる
あと、相撲界や野球の世界でも苦労人は多い。関取になるまで幕下で10年。それが新入幕で殊勲賞でもとれば立派な苦労人だろう。
35才で大関になれば、琴奨菊のように立派な苦労人ストーリーが。
菅首相の"苦労人"はメディアの作り話だった
話は菅首相に戻るが100%苦労人じゃないと思う。
『雪深い秋田から上京』『集団就職』『法政大学』『元市議』…などなど。
苦労人っぽい風貌に加え、こうしたキーワードを基に三流メディアが『叩き上げの苦労人』のサクセスストーリーを作り上げたが、実際は全く違う。
まず、実家はかなり裕福だ。年代的には集団就職世代だが、これは中卒が大半だった。菅さんは高校を卒業し、法政大学に入学している。
法政はイメージとしては他の六大学やMARCHの中で一番、苦労人っぽい。しかしこれはただ単に法政大学しか受からなかったんだろう。
実際、姉は国立大学、弟に至っては慶応大学を卒業している。貧しい実家の訳がない。
ちなみに今の法政は立地もよく、ハイセンスな女子にも人気の大学だ。

地方議員出身だが逆に政界エリートでは
あと市議上がりだと叩き上げ、苦労人かというとこれも疑問。
当時神奈川のドンと言われた小此木彦三郎衆院議員の秘書から横浜市議に当選したが、小此木氏の力を背景に、2期目で早くも影の市長とまで言われた。
たったの市議2期で代議士になるのは苦労人の訳はない。
しかし自民党国会議員の70%がなんらかの世襲議員。彼らに比べたら叩き上げかつ苦労人かもしれない。
もりもとなおき