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超斜陽新聞産業。さらに衰退してもジャーナリズムを守ることは可能

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新聞産業が危機的状況なのは紙面を見たら分かる

新聞産業が危機的状況なのは残念ながら紙面(記事、広告)を見たら分かる。その紙面を作る記者たちの体たらくぶりも官邸記者クラブの腰抜けぶりなどから分かっていた。もちろん、地方もしかり。

しかしながら数字がここまでとは思わなかった。何とここわずか3年で全国の日刊紙が700万部も減っているのだ
ピークは1997年の5376万5000部で、昨年10月は3509万部にまで落ち込んでいる。

ここ数年は毎年、確実に数%から7%も減っており、完全な斜陽産業だ。この下げはもう止まらない。今後、倒産や廃業していく新聞社が出てくるのは間違いない。

衰退は止まらないが、新聞を守ることはまだ可能だ

衰退を食い止める方法は無いが、なんとか新聞を守ることはできる。結論から言うと全ての新聞人が貧しくなっても"言論人"ということにもう一度、目覚めるべきなんだ。

新聞産業は本当は苦しい時代の方が長かったことをもう一度思い出して欲しい。
でも長い歴史が刻まれたのはペンで不当な権力と闘う大切さ、ペンが正義と弱者を守ることができると、記者はもちろん、全ての新聞労働者が分かっていたからだ。

ところが…日本経済が急激な右肩上がりの中、新聞は先頭を切って儲かる産業となったのが不幸の始まりだったと思う。

広告を貼るだけで無尽蔵にお金が入った時代が新聞をダメにした

紙面に企業の広告を貼り付けるだけで打ち出の小槌よろしく、じゃぶじゃぶお金が入ってきたのだ。
こうなるとハングリー精神など皆んなが忘れてしまった。

爆上がりした給与と待遇は多くの高学歴社員を採用することができたが、新聞人のスタンスそのものが少しずつ権力者に理解ある存在になってしまった。

地方紙などは三大紙以上の高待遇となってしまい、『地元の優良企業だから入りました』みたいな連中であふれ、ジャーナリズムの在り方など考えたことも無い若者が記事を書いたり見出しをつけ始めたのだ。

新聞記者が30代で縦に立つほどのボーナスを手にする。完全に間違っていた。

紙面の劣化は斜陽化の一つの要因に過ぎない

そして新聞産業の斜陽化はジャーナリズムの劣化といえば簡単だが、実はこれは要因のひとつ。

もっとも大きかったのは若者の活字離れ、日本の貧困化、超高齢化が最大の原因だと思う。
にわかに信じれなかったが、ひとり暮らしの大学生で新聞を取っているのは恐らく1%未満だろうと。

そしてこの30年間、実質賃金が下がり続ける現状。お年寄りは新聞は大好きだが、か細い年金暮らしの中、新聞代は生活を圧迫する。取りたくてもやめざるを得ないのだ。

日本の新聞電子版の先行きは暗い

今、新聞産業は電子版に活路を見いだそうとしている。しかしあまりに見通しは暗い。

現在、電子版では読者に比較的裕福な層が多い日本経済新聞が70万人余の契約で一社のみ、なんとか軌道には乗りつつあるが、他社は全く伸びていかない。
地方紙の電子版など、紙媒体からのまとまった転換など、冷戦に考えればあり得ないのだ。

アメリカニューヨークタイムズはかつて紙媒体だけの時代はせいぜい100万部止まりだった。それが電子版を発行すると毎月、伸び続け、今や契約者は1000万人に迫る勢いだ。

なぜ成功したのか。それは簡単なことで、読者が全世界にいるからだ。
これまで世界中のインテリが読みたくても読めなかったニューヨークタイムズが、スマホやPCで簡単に読めるようになったからだ。

翻って日本の新聞はどうだ。世界では全く勝負できない。これまで通り、国内でパイを奪い合うだけ。
さらに宅配制度が支えた紙には遠く及ばないだろう。

新聞を守るということは言論の自由を守るということだ

家貧しゅうして孝子出ずー。かつて毎日新聞が倒産の危機にあった時代、こう言われた。給料も安くボーナスも出ない。こんな状況の中でなぜか大スクープを連発したのだ。孝子はもちろん、現場の記者たちだった。

これはやはり"毎日新聞を潰してなるものか"という記者たちの思いであり、厳しい生活の中の反骨精神の発露だった。

これからも新聞は部数も減るだろう。広告媒体としての役割も消え広告収入も確実に激減する。

しかしこうした貧しい中でこそジャーナリズムの復権は可能だ。小さくとも光る存在の新聞を作ることだけ考えればいい。

もりもとなおき

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morimoto_ naoki72

森本 尚樹 早稲田大学卒。元新聞記者。約20年間、県議会議員を務めました。現在は福祉関連の会社の参与と在京シンクタンクの研究顧問

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