ヤクザ映画を投影、東大駒場祭ポスター
若い人たちは絶対、知らないと思うけど、作家の橋本治さんが亡くなった。まだ70才、いわゆる団塊の世代、全共闘世代だ。
東大在学中の1969年11月の東大駒場祭のポスター『とめてくれるなおっかさん 背中の銀杏が泣いている 男 東大どこへいく』
という、時代を投影したキャッチコピーがあっという間に有名になり、橋本さんは時代の寵児となった。
当時は高倉健さんらのヤクザ映画が大流行。全共闘の学生たちにも大人気だった。
東大のエリートが学生運動の道に入り闘うことを、健さんが長ドス持って単身、敵地に乗り込む姿と重ねたヤツが多かった。で、入れ墨が銀杏。
ちょうど東大全共闘ができたころだ。この駒場祭からわずか2か月で、あの壮絶な安田講堂攻防戦となる。
おっかさんがとめても僕はいくの図
すでに闘いの前哨戦が連日繰り返されていたが当時、東大といえば秀才揃い。あまりに非力な東大生が屈強な機動隊員と闘えるのかと、ある意味偏見の目で見られていた。
そして秀才君はボンボンが多く、過保護だ。学生運動でバリケードに立て籠もり、機動隊と闘うことは、お母さんたちが心配でしょうがない。
その母親たちの気持ちを断ち切るセリフが『とめてくれるなおっかさん…』となった。
背中の銀杏が泣いている。銀杏は東大の校章。ここに東大エリートのイヤミなプライドを示した(笑)
当時の東大生は海パンにまで銀杏のバッジをつけると冗談で言われるくらい、自負も強かった。
桃尻娘が代表作だが、硬派の作家でもあった
橋本さんは東大卒業後、『桃尻娘』を発表。桃尻娘シリーズは代表作になった。
小説現代新人賞、新潮学芸賞、小林秀雄賞、柴田錬三郎賞、野間文芸賞など受賞多数。
ご冥福をお祈りいたします。
もりもと なおき