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事件記者はかくあるべきと教えてくれたターさんのこと

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新聞社に入社してから内勤の長かった私の同期のYが、遅ればせながら県警担当になった時だ。キャップのTさんに挨拶に行ったらいきなり『その軟弱な頭はなんや!パンチパーマ当ててこい!』と、ガツンとかまされた。
Yは髪を七三にバシッと分け、絵に描いたような真面目な風貌。Tさんから見たら『これではサツ回りはムリや!』と、見た目だけで判断されたようだ。

Yから相談があったので『言う通りにした方がいいゾ』とだけアドバイスしたが(笑)翌日Yを見て腰を抜かした。本当にパンチパーマで出勤したのだ(爆)まさかなぁと驚きしかなかった。
その晩、みんなで街に繰り出したが、ラウンジで歌を勧められたYが選んだのはフォークだった。しかしTさんはまたしても『男ならど演歌うたわんかい!』と。慣れない演歌に挑戦するYが実に悲しかった。

Tさんは誰からも『ターさん』と呼ばれ、愛された。柔道5段の猛者。事件記者の中の事件記者として名を馳せてきた。
警察や暴力団はもちろん徳島の夜の街の超有名人。初めて会った人は絶対に『そのスジの人や…』と、100%勘違いするくらいの強面。でも女性や弱い人には実に優しかった。

私は入社以来、公私ないくらい仕事も遊びも常にターさんと行動を共にした(させられた汗)。そのおかげでただのインテリだった私が(笑)警察取材、暴力団との接し方、酒、バクチ、女、森羅万象…社会部記者としてのスキルを身につけることができたのだ。
"徳新のモーさん"として一目置かれる記者になれたのは、ターさんのおかげだと感謝しかない。私は幸いなことにパンチパーマやど演歌の強要はされなかったし。

還暦後はがんや肺気腫を患い闘病に苦しんだが、FM局の社長在任中に亡くなった。宵越しのカネを持たず、借金してでも皆んなに奢りまくった人生だった。

もりもとなおき

  • この記事を書いた人

morimoto_ naoki72

森本 尚樹 早稲田大学卒。元新聞記者。約20年間、県議会議員を務めました。現在は福祉関連の会社の参与と在京シンクタンクの研究顧問

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