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好評青春の記者シリーズ。刑事調書まで読ませてもらったわが人生の時

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まずデカたちとの人間関係の構築から始まる事件記者

どんな仕事も良好な人間関係があればこそだ。特に警察担当の記者は刑事との人間関係と、どこでも飛び込んでいく胆力しかないと、自分の経験から思っている。

田舎のことだからいつもいつも殺人や強盗、珍しい生活事犯や汚職事件がある訳じゃない。
しかし事件の見方、掘り下げ方によったら普通ならベタ記事が、社会面トップにもなる。

そのためには警察の広報文と広報担当に少し取材するだけでは面白い記事にならない。
ある田舎の警察署の刑事課長にこんなことを言われた。

「もーさんがうちの署の担当してくれるようになって、小さな事件でも新聞記事の扱いがデカくなった。新聞読んだ刑事の嫁はんが『お父さんも頑張ってるんやな』と褒めてくれると、みんな喜んでるわ」と。

その頃の僕

なんと私に大切な調書まで読ませてくれた刑事課長

そこで私が提案した。事件の詳しい話し聞くだけやなく、調書とかチラ見できたら、もっとオモロい記事書けますよと。

まさかなぁと思ったが、それから刑事課長のデスクにこれ見よがしに被疑者の調書が。

今みたいにスマホもない。いくら何でも堂々と書き写しもできない。ところが私がペラペラめくって読み終わるまで、課長は違う方向を向いて一人で喋っていた。

もちろんその日以来、犯人の心情に深く踏み込んだ濃い記事が読者に提供できたのはいうまでもない。

そして嬉しかったのはその前々年まで検挙率が県内最下位だった署が、なんと翌年はダントツでトップに。私の記事で皆んなが張り切った成果だと感謝された。

社会もひとりひとりも生き生きと輝いていた時代だった

今なら記者に調書を読ませるなどあり得ない。バレたら完全に課長はアウトだろうな。
ここまで信頼関係を構築できたことを当時は誇りに思ったものだ。

遥か遠い昭和中期の出来事。当時の若い刑事たちも全員、とっくに定年退職している。

私も青春ど真ん中だったので、彼らには本当にかわいがってもらった。

デカい事件の時は『もーさん行くぞ!』と声がかかり覆面パトに同乗して現場へ行くことも。
夜間など『パトロール一緒に行かへんか?』と呼びに来られ管内を回ることもあった。

考えたらめちゃくちゃだが、おおらかな良き時代だった。まさにわが人生の時だ。

もりもと  なおき

  • この記事を書いた人

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森本 尚樹 早稲田大学卒。元新聞記者。約20年間、県議会議員を務めました。現在は福祉関連の会社の参与と在京シンクタンクの研究顧問

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