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怒りに任せ被疑者氏名が晒される風潮だが、メディアは常に冷静に

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どんどん減ってきた感じがする匿名報道

かなり以前は警察が事件を摘発し、発表する時、被疑者氏名はAなどと匿名で表すことが結構、あった。

警察や検察とわれわれ記者クラブとの間には、被疑者が精神科への通院歴、あるいは入院歴があった場合は実名は必ず避け、とりあえずイニシャルで発表するという取り決めがあった。

もちろん精神障がい者への人権上の配慮であり、当然だと判断していた。
新人記者には十二分に指導したのも覚えている。

そしてこうした被疑者は検察、弁護側から専門医の精神鑑定を受ける。
結果、心神耗弱が認められた場合、さらに責任能力の可否を判断。責任能力が認められた場合は、やっと裁判では実名を晒した。

責任能力が認められない場合は、不起訴となりそのまま精神科へ措置入院となる被疑者も相当多かった。

凶悪犯罪の被疑者の名前はみんなが知りたいが…

最近の事件で思うのは、被疑者が精神科の通院歴や入院歴があっても、凶悪な事件や話題性のある事件は当初からテレビや新聞でガンガン名前が晒されることだ。

メディアが少々、タイミングを置いても瞬く間にネットに出てしまうから、メディアが匿名にする意味はないと言われればそうだ。

しかし人権意識よりも犯罪に対する世論の怒りが上回り、メディアも捜査機関も被疑者が精神障がい者であっても名前を出してしまっているのが、現状か。

先日、あおり運転の上、後続車のドライバーを殴った大阪市、宮崎文夫容疑者(43)は、以前、精神病院に2ヶ月の入院歴があった。
昔なら分かった段階で匿名に切り替わったが、今回はその気配もない。

宮崎容疑者は以前、精神病院への入院歴があったというが…

怒りに任せる前に、まず冷静な判断のための社内議論を

新聞社や放送局の倫理規定は今はどうなっているのか、知りたいところだ。

私は現役時代、基本的には、凶悪犯罪についてはいかなる理由があっても被疑者の名前を晒すべき…が、個人的スタンスだった。

しかし自分の感情だけに走らないよう、捜査機関とも、もちろん社内議論もして被疑者の氏名の扱いを決めた。

"怒りに任せてとりあえず名前は出す"という最近の風潮について、メディアも捜査機関ももう一度原点に返り、冷静な判断ができるよう議論すべきじゃないのかと考える。

もりもと  なおき

  • この記事を書いた人

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森本 尚樹 早稲田大学卒。元新聞記者。約20年間、県議会議員を務めました。現在は福祉関連の会社の参与と在京シンクタンクの研究顧問

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