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性被害と日本社会の憂鬱。伊藤詩織さんの活動は、岩盤を貫くか?

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多くが泣き寝入り。日本の性被害者


強姦など性被害者のうち、きちんと警察で事件として取り扱われるのはどのくらいなんだろう。私の事件記者としての経験から判断しても数%にも満たないのではないかと思う。民事で示談をして、わずかな慰謝料をとればまだマシ。大半の被害女性が泣き寝入りしているものと思われる。

被害に遭った後、多くがまずひとりで苦しむ。そして勇気のあるごく一部の人が警察に被害を訴えたり弁護士に相談する。しかし当然、赤裸々な事情聴取を受けること、さらに裁判の法廷では加害男性側の弁護士からの、容赦ない質問を浴びせらることに耐えるタフな女性はさらに絞られ、結局、強姦した男を裁判まで引きずり出すケースは本当にまれだ。

警察になぜ直ぐに届けないのか、なぜ直ぐに病院で診断書をとらないのか、などという意見もあるが、なぜ直ぐに対応できなかったかの被害者の心情は被害者以外は分からない。女性からこうした意見がでることにも、本当に驚きしかない。

警察白書を見ても強姦は思ったより遥かに数が少ないはずだ。それはわが国の性犯罪が少ないのではなく、女性側の泣き寝入りが余りに多い現状の裏返しだ。

私も強姦の裁判は何度も傍聴取材したことはあるが、自分が女なら果たしてこの原告席に立ち、被告弁護人の質問に耐え得るだろうかと、考えることもあった。

一般の人から質問を受けることになる裁判員裁判になり尚更、出廷するということは、被害女性にとっては辛い状況になっているのではないか。


常にセカンドレイプ渦巻く日本社会


今、在京キー局の有名記者に酒を飲んだあと乱暴されたと自ら名前を名乗って訴える、女性ジャーナリスト伊藤詩織さんという女性が話題になっている。

伊藤さんや支援者、一部メディアは、当該男性には準強姦容疑で逮捕状が出ていたのに、直前に突然、逮捕を免れたのは、何らかの政治的なチカラが働いたからではとみる。

これに対しもちろん当該男性も真っ向、反論しているから、ネット上は双方の支援者が泥仕合を繰り広げている状態だ。国会でも取り上げられた経緯がある。

外国人記者クラブで会見する伊藤さん

あと、日本社会というかネットでは凄まじいばかりの伊藤詩織さんに対するセカンドレイプとも言える誹謗中傷が渦巻いている。性被害に遭った女性が訴えることを躊躇するのは、警察、裁判の屈辱的な煩わしさに加え、このセカンドレイプへの恐怖もある。

彼女は今、日本から避難しイギリスに在住。BBCのドキュメンタリー番組など外国メディアで自らの体験を通して味わった、女性の性被害に対するわが国の立ち遅れた現状を訴えている。

ハリウッドで巻き起こったMe Too運動など、性被害に断固立ち上がり、闘うという女性からの戦いは世界的に高まっている。伊藤さんの行動が、わが国に延々と続いてきた性被害者への考え方、女性は泣き寝入りを余儀なくされる社会を、少しは突き動かすことができるだろうか。

もりもと なおき

  • この記事を書いた人

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森本 尚樹 早稲田大学卒。元新聞記者。約20年間、県議会議員を務めました。現在は福祉関連の会社の参与と在京シンクタンクの研究顧問

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