政治家、とりわけ首長の能力とリーダーシップは世の中が突然の危機に直面した時、はっきりと示される。
私がいつも思い出すのは東日本大震災後、凄まじい手腕を発揮した福島県相馬市の立谷秀清市長のことだ。新型コロナウイルスでパニックの今、こんなリーダーを待望する。
『俺は殉職した消防署員、団員の子どもに責任がある』
2011年の3.11の後、個人的にお会いする機会があり震災時の話しを伺ったが、感銘を受けることばかりだった。
立谷市長は元々、お医者さんだ。津波が街を襲った時、多くの消防署員が迫る津波の中、大半の家々で留守を守っていたお年寄りの救出に走った。
この結果、20人を超える消防署員、団員が命を落とした。立谷市長は悲しむ間もなく、直ぐにパソコンを操って"奨学金"をネットで開設すると、何と世界中から多額の浄財が。
実はこれは亡くなった消防署員、団員らの子どもたちのための奨学金だった。
『俺は彼らの子どもたちの将来に責任があるんだ。だから本人が嫌だと言っても彼らの子どもたち全員を大学に入れるんだ!そのための資金はもう十二分にあるんだぜ』と。
恐らく津波で多くの犠牲者が出たのはその日のうちに把握したんだろう。
職員に「死亡者のための棺を確保せよ」と命じた話も有名だ。
直ぐに仮設住宅用地を確保せよ!原発避難者も受け入れよ!
あと仮設住宅もプレハブのほか、鉄筋の立派なものを建設した。
これは『落ち着いたら希望者には安価で分譲してあげるんだ』との話しには、本当に驚いた。建設用地確保も迅速だったと、職員に聞いた。
また市の南部は東京電力福島第一原発がある双葉郡だ。
放射能禍から原発周辺から多くの人たちが避難してくることを予測した。そして相馬市で受け入れるための住居の確保も職員に命じた。
とにかくあらゆることを考え迅速な対応をとったことは、当時有名になった。これこそ真のリーダーだとも。
多くの職員被災も『我々は悲しんでる暇はない!』と陣頭指揮
市の職員さんにこんな話しを聞いた。『市長はお医者さんだからプライドも高く、"あまり市民に頭を下げない"と、批判の声がありました。震災では職員の多くも被災しましたが、その晩から陣頭指揮に立ったのは市長でした。"われわれは悲しんでる暇はないんだ"と職員をビシッとまとめ、次から次と的確な指示を出しました』と。
そして『こんな凄い人だったんだ!この人が市長で良かった!と、皆んなが思ったんですよ』と、立谷市長のリーダーシップに感服したという。
危機の時にわかるリーダーの本当のチカラ
相馬市の職員さんじゃないが危機の時こそ、そのリーダーの資質、値打ちが分かってしまう。新型コロナウイルスへの国や自治体の対応を拝見すると明白だ。
パフォーマンスは一発でバレるし、最大多数のための一瞬の判断力は胆力もいる。そんな意味でも北海道の鈴木知事、千葉市の熊谷市長は私はさすがだと思う。
ネット社会だ。彼らのコロナ対策の判断も、リアルタイムで全国に流れてくる。やはり各地の行政マンはキチンとそれをチェックをし、素晴らしい対応は遠慮なく真似たらいい。
政治家の下らないメンツや自己顕示か、心から住民福祉のためか、それは見たらすぐにわかる。
もりもと なおき