前代未聞、トップが不正論文で懲戒解雇
東洋英和女学院といえばかなり憧れた女子大だった。キリスト教(プロテスタント)系のお洒落な大学で、われわれではちょっとお付き合いするのは無理目なお嬢様のイメージがあった。
この女子大のなんと深井智朗学院長が論文をねつ造したなどとして懲戒解雇されたから驚きだ。
この世界の研究者としてはまさに第一人者。昨年など著書『プロテスタンティズム』(中公新書)で読売・吉野作造賞を受賞しているから、その権威が分かるというものだ。
引用したのは自身が書いた架空の論文
なぜ問題になっているかが私はちょっと理解し難かった。
普通、こうした論文で問題になるのは、大概は他人の論文などをかってに盗用。盗まれた相手の訴えで分かったりする。
こうしたトラブルは山ほどあり、発覚した後は論文や作品は封印されるケースは多い。音楽の世界も良く聞く。
しかし今回の元学院長のケースは不祥事なんだろうが、かなりレベルが高いのだ。
なんでも引用した論文そのものも架空の人物を装って元学院長自身が書いたものとか。この偽論文を引用し新たな論文を書いたという。
深井学院長
自分の文章の引用がなぜいけないのか。新たな論文の論理の展開をスムーズに結論づけることを可能にしてしまうからなんだろうなと、考える。
それと架空の学者をつくってその人を研究対象にすれば、論理が破綻するのは間違いない。
論文は根拠ない結論導入
調査委員会は『元学院長の問題の著書及び論考は、根拠なく結論が導き出され、研究者のみならず一般読者にとっても非常に悪影響を及ぼしている』とした。
だから学内の調査委員会には普通の盗作などより、より悪質だとされたようだ。調査委員会は『全てでっち上げだ』と、厳しく指弾した。
問題となった「ヴァイマールの聖なる政治的精神」は、近代ドイツの神学を政治や社会との関係から描いた本。
引用した論文とその著者について、調査委はその双方が存在することを示す資料を求めたが、深井氏は出せなかった。
そらそうだ。自分が作った架空の論文だったからだ。
もりもと なおき