『マー坊にしてやられたナンパの苦い思い出』
学生時代、合コンとかナンパはほとんどしたことがない。それでも鈴木のマー坊と一緒に偶然、ナンパをしたことがある。忘れもしない高田馬場にできたばかりのBig Boxでの出来事だった。私にとっては結構、苦い思い出だ。


なぜなら私が気に入ってた方の女学生をマー坊にお持ち帰りされてしまったのだ。幸いマー坊は緊張のあまり未遂に終わった…
しかしこの場合、そんなのはあまり関係ない。2人で彼女の部屋のベッドで裸で一晩過ごしたことが重大なのだ。こいつ殴ったろかと…
たまたま2人でBigBoxでアイスクリームを食べていた。それを近くで見ていた2人組が『美味しそう!』と話しかけてきたのだ(逆ナン?)
聞けば早稲田の第二文学部の女学生だ。話が弾まない訳がない。意気投合し4人で新宿の居酒屋に繰り出すことになった。
私の失敗は気に入った方、悦ちゃんともっと話をしたらよかったのに、もう一人が太宰ファンだったことだ。
太宰ファンの私としては黙っているはずがない。その子と太宰論を展開しているうちに、終電近くになってしまった。
何とこの間、マー坊は悦ちゃんといつの間にか仲良しになっていた。店を出たら手を組んでいたから『やられた!』と思うも後の祭り。当然のように送っていったのだ。
私といえばもうひとりの太宰ファン、一流国立大学をやめてまで早稲女になった女子は、全くタイプじゃなかったのだ。だから送らなかった。
後日、彼女にはガリ版刷りの大江健三郎の発禁本『セブンティーン』(お宝)を貸したが、ついに戻ってこなかった。

そして文学部キャンパスのスロープに、マー坊と悦ちゃんを発見したのは、一週間後だった。
もりもとなおき