紅白歌合戦でも登場したが、NHKが制作したプロジェクトとして自画自賛しているAIで復活した美空ひばりは、本当にNHKが言うように多くの人々を感動させたのだろうか。

あの歌のどこが美空ひばりなんだと思ったが
確かに"新曲"『あれから』はいい歌だ。しかし生前のひばりさんの声、歌をAIで徹底的に分析したとはいえ、私はあのAIによる歌声は、とても昭和の歌姫、日本の歌謡史に燦然と輝く美空ひばりの歌とはほど遠いと思った。正直、ふざけるなよNHKの気分だった。
またひばりさんの姿も違和感しかなかった。アニメと人間の中間のようで、こんな風に人間を再現してもいいのかとの思いがあった。

紅白の目玉づくりのためのドキュメンタリー番組だった
AIで復活した美空ひばりについては、制作の舞台裏を描いたドキュメンタリを9月にNHKが放送している。
当然、NHKはホームページに感動を伝える様々な声が届いたと、披露している。
コンピュータで美空ひばりの歌が再現できる訳がない
こんな感動したとの声に反して、変な違和感しか感じていないのは私だけだと思っていたが、ネットに同じような感想を持つ人の意見はやはりあった。
例えば漫画家の小林よしのりは「美空ひばりを侮辱してはいかん」と題したブログを公開。「美空ひばりの歌はあんな平板なものではない。コンピュータの再現なんかダメだ」と書いた。
また、74年から紅白歌合戦の白組司会を9回連続で務めた元NHKアナウンサーの山川静夫は、毎日新聞のインタビューで「僕はああいうの、反対だな」「声色はだいぶ近づけることができたようだけど、映像の出来栄えは『あの程度』でしょ」と批判している。
AIの技術はまだまだ。NHKの勇足だと思う
以前、別のテレビ番組で"ヒデとロザンナ"のロザンナが出演し、亡き出門ヒデのビデオと10数年ぶりに共演。ヒット曲『愛の奇跡』を歌い、スタジオの皆んなが涙したシーンがあった。あんな人工の作りものより、この方がよほど感動する。
AIの技術がいったいどこまで進歩しているかは知らないが、まだまだ完全なものには遥かほど遠い。今回のAI美空ひばりは、NHKの勇足だと思う。
そして仮に技術が進んだとしても、映像上で実在した人物を勝手に再現し、話をさせたり歌わせることの意味を考えるべきだろう。
もりもと なおき